リアリズムの喫茶店の紹介

        『リアリズムの喫茶店』多田亮三郎 

平成30年7月5日に、私の三部作の趣味論である『リアリズムの喫茶店』がアメージング出版からPOD(プリントオンデマンド=注文すると印刷して本を送ってくれるシステム)として世に出ました。今回はPODですので、amazonのサイトから注文していただくことになります。ネット検索で多田亮三郎と入力しますと、本の題名が出てきますので、「amazonで購入」をクリックすると購入できます。

※なお、一作目の『リアリズムの学校』は、書店販売ですが(書店で在庫がなければ配送料無料で書店取り寄せになります)、通販も可能です。ネット検索で、「ネット書店ジャングル」と入力しますと、その2号店で購入できます(いろんな購入サイトがありますが)。

以下は『リアリズムの喫茶店』の紹介文と目次とあとがきです。

            <本の紹介>

「なぜ儲からない喫茶店を30年以上もやっているのか」という根本的な問いかけに対するオーナーのこたえは、照れもあるのか、実に様々だった。しかし共通していたのは、自分はこういう生き方しかできない、という開き直りとも思える諦観だった。いいカフェのオーナーは、一日数人しか客が来なくても、「気楽にやっているからこれで十分」という気概にあふれていた。だとしたら彼らは、「金銭の彼岸」に到達している人生の達人なのかもしれない。客はそんなマスターのいれる温かい珈琲を味わい、カフェの「優しい無関心」に癒され、ほっとして家に帰れる。

拙著は、50年間で2000万円以上喫茶店に注ぎ込んできた人間が描く会話形式のカフェ論であり、カフェオーナーやカフェオーナーを目指している人にはけっこう役立つ本だと自負している。今主流のほんわかした夢のようなカフェ本ではなく、客目線に立ったかなりハードな本なので、覚悟して読んでほしい。

                <目次>

リアリズムの喫茶店 目次  

回顧 ――――――――――――――――――――――――――――――――――― 7

 DIG、オスカー、アートコーヒー、ライオン、アンヂェラス 

京都の喫茶店 ――――――――――――――――――――――――――――――― 23

 柳月堂、みゅーず、クンパルシータ、回廊、ひいらぎ、ワンダアカフェ、進々堂

 サンシャインカフェ、築地、李青、イノダ、ラテン、リドル、ヤマトヤ、ルーフ、

 アルセーヌ・ルパン、タナカコーヒー、池、ドルフ、ニフティ、りほう、

 エレファント・ファクトリー、吉田屋、ラビットコーヒー、キャラバンサライ

 エリゼ

大阪の喫茶店 ――――――――――――――――――――――――――――――― 55

 音工房、ロジカ、つろぎ、桜珈琲、シャムロック、マクロルスカイ、かわさき、

 樹の花(東京)、アメリカン、レドンド、ル・プルミエ、リーガロイヤルホテル 

 メインラウンジ、珈琲艇キャビン、ルル、英国屋、モード、FUTURO、

 カフェ・ド・ラ・ペ、トップシンバル、バード、ポイント、四分休符、チ・ケ、

 ジルベール・ベコー、リトルマーサ、ピット・イン、阿修羅窟、杏樹

神戸の喫茶店 ――――――――――――――――――――――――――――――― 131

 エデン、珈琲道場、JAVA、M&M、ジャストインタイム、にしむら、茜屋、ん、

 ポエム、恕庵 

和歌山の喫茶店 ―――――――――――――――――――――――――――――― 151

 画房、テイクファイブ、キャットウォーク、バグース、アルタミラ美術館、

 スハネフ14―1、羅漢、ハミングバード、アルゴ、バール・ヌメロ・オンセ、

 アランチャ、JAVA・JAVA、プラットフォーム、ハチラボ、ドーシェル、

 ミンガス、洛匠、ボヌール、ほんぐう

奈良の喫茶店 ――――――――――――――――――――――――――――――― 185

 奈良ホテルティーラウンジ、エル・ムンド、オリヅル社、ルシアン、叙友舎、

 ラーガマーラ、たかばたけ茶論、浮見堂、なや、ルナ、芳魂庵、ブリックス、

 てぬき庵

徳島の喫茶店 ――――――――――――――――――――――――――――――― 235

 春秋苑、門、皇帝、森珈琲店、珈琲美学、ふらんせ蔵、ゆかい社中そらぐみ、

 とよとみ珈琲 

東京神奈川エリアの喫茶店 ――――――――――――――――――――――――― 263

 新宿風月堂、ルオー、羅甸区、ナジャ、邪宗門、ミルクホール、モノリス

 ロンカフェ、キャビン、茶蘭花、ちぐさ

その他の喫茶店 ―――――――――――――――――――――――――――――― 283

 翁堂、コットンウィード、シャモニー、てまり、火星の庭、カフェソラーレ

 (大阪)、峯照庵、ギンゲツ、プレイバッハ、芦屋珈琲舎、ミモカ

まとめ ―――――――――――――――――――――――――――――――――― 301

 コメダ珈琲

あとがき ――――――――――――――――――――――――――――――――― 314

                <あとがき>

 カフェフリークとしてこの五十年間、数えきれないほどの喫茶店に入ったが、ここに載せたのはそのうちのごくわずかな店にすぎない。とりあげたのはほとんど個人経営の喫茶店だが、そのうちのかなりの店が今はもう存在しない。個人経営のカフェは全然儲からないのだ。

 しかし今も閉店せずに頑張っているカフェも少なくない。なぜ儲からないのにやっているのか。いろんなこたえがあるだろうが、根底にあるのはストレスがないということである。組織に属さないので嫌な人間関係もないし束縛もノルマもない。そう考えると喫茶店経営というのは、協調性のない人間にとってはねがったりかなったりの職業なのかもしれない。毎日カウンターの向こうでお気に入りの音楽を聴きながら、一人で本を読んだりパソコンを操作したりテレビを見たり執筆したり、たまに客が来れば適当に喋ればいいだけ。嫌な客も来るだろうが、そのときは徹底的に無視すればいい。よほど鈍感でなければそのうち来なくなる。

 大切なのは金や名誉じゃない。ストレスがなくなることだ。そう考えれば儲けなどどうでもよくなる。それは世俗の執着をかなぐり捨てた悟りの境地のようにも見える。だとしたら客が払う代金とはオーナーに捧げるささやかな喜捨になる。金や名誉を捨てて不退転の境地に達したオーナーはまだまだ少ないが、見分けるのはさほど難しくない。要は長くやっていること。それが唯一のメルクマールになる。まったく儲からないカフェを何十年も続けているというのは、金銭への執着を断ち切って「金銭の彼岸」にたどり着いた証なのである。結局カフェオーナーは三タイプにわけられる。「金銭の彼岸」にたどり着いた迷いのないオーナーと、「金銭の彼岸」と世俗の欲望との間でのたうちまわっているオーナーと、喫茶店は儲かると本気で考えているオーナーの三タイプである。儲けを考えるオーナーは儲からないとすぐにやめてしまうが、金銭欲のないオーナーはそんな理由ではやめない。だがそんなオーナーでも病気等のやむにやまれぬ事情でやめざるをえないこともある。つまり個人経営のカフェは、減ることはあっても増えることはないのだ。

 今回も『リアリズムの学校』同様、鼎談の形式を用いてカフェをリアルに描写してみた。私の分身でもある八雲さんと進士さんとで浮かび上がらせたカフェの実像が読者に伝われば、これほどの喜びはない。拙著は三人のカスタマーによる客目線でカフェを論じたものであるが、カフェを経営する側の人間にとっても、役立つものであると信じたい。 

 最後に、私が今いちばん足しげく通っている、私にとってはダントツでナンバーワンである個人経営のカフェについてひとこと。そこは昭和五十六年十二月十一日に開店した大阪泉佐野にある老舗ジャズ喫茶だが、あまりにも近すぎて書ききれないという理由であえて載せなかった。お許し願いたい。なお、この論は、加筆修正して平成三十年六月に提出したものであるが、内容との整合性を考えて、日付はあえて実際に擱筆した平成二十六年十月十九日にしている。                   

                    平成二十六年十月十九日  多田亮三郎